パスゲッティ | あなたの時間を彩るエンタメ情報

“クレヨンしんちゃんらしさ”とは「SUPER SHIRO」湯浅政明×霜山朋久 対談

ビデオパス

「クレヨンしんちゃん」に登場する野原家のシロは世界の平和を守るスーパーヒーローだった! そんな驚きの物語を描く「SUPER SHIRO」が、KDDIの映像配信サービス「ビデオパス」で配信されている。本作で鍵となるのは未知のエネルギー体“ボボボボボーン”。それを巡り、シロと世界征服を企む発明犬・デカプーが壮大な追いかけっこを繰り広げる。

5分のエピソードを毎週1話ずつ配信する全48話の「SUPER SHIRO」。本作の総監督は「夜明け告げるルーのうた」「きみと、波にのれたら」で知られる湯浅政明が務めた。パスゲッティでは作品の魅力に迫るべく、湯浅とチーフディレクターである霜山朋久にインタビューを実施。企画の成り立ちや脚本を手がけたうえのきみことの仕事、とにかくよく動くというアニメーション、クレヨンしんちゃんらしさについて話を聞いた。

取材・文 / 小澤康平

最初にイメージしていたのは「トムとジェリー」(湯浅)

──約20年前のインタビューで、湯浅さんが「クレヨンしんちゃん」の仕事を「気楽にできる、楽しい仕事」とおっしゃっているのを拝見しました。その気持ちに変化はありますか?

湯浅政明 大変なことはありますが、やっぱり楽しいですよ。「クレヨンしんちゃん」って形になるのが速いんです。ほかの作品だと、考えて設計して、そこからの作業が長い道のりになるんですけど、「しんちゃん」は力技でも通用する部分があるので。そういう意味で楽しさは当時とあまり変わってないですね。

──なるほど。では、企画の成り立ちを教えてください。

湯浅 「シロで何かやりませんか?」というお話をいただいたのが最初です。何をやるかとなったときに、人知れず、犬たちが世界の覇権争いをしているスーパーヒーローものの設定でキャラを考えました。

──霜山さんも最初の段階から関わっていたんですか?

霜山朋久 最初は、僕は関わっていなくて、ある程度企画が進んでいたときに「キャラクターデザインをやりませんか?」と声をかけてもらったんです。でも話を考えるところもやりたいと伝えたら「じゃあどうぞ」となって、チーフディレクターをやることになりました。

──お話はどのように詰めていったんでしょうか?

湯浅 霜山くんと脚本のうえのきみこさんと話しながら作っていきました。最初は「トムとジェリー」のようなスラップスティックをイメージしていたんです。そのうえで「いろいろなバリエーションで見せたほうが面白いよね」という話になり、皆でアイデアを紡いでいきました。

霜山 うえのさんとはアニメ「スペース☆ダンディ」でもご一緒させていただいたんですが、没になったアイデアを聞いたときとかに「そんなことも考えていたのか!」と思うことが多くて。いい意味で考え方が大胆すぎる(笑)。

湯浅 僕も「スペース☆ダンディ」には参加していたので、うえのさんのうわさはいろいろ聞いていて。すごく面白いことをやっているという。「こうしたいんだけどどうなりますか?」「どうすればできますか?」みたいな難題をうえのさんにぶつけることもあるんです。脚本家としての構成力が素晴らしいから、打ち合わせでまとまらなかったものを一度持ち帰ってもらって、次に見せてもらうときにはまとまってるんですよね。

霜山 湯浅さんも大胆なアイデアを言ってくることが多いですけどね(笑)。シロの心情を別の声で語らせるというのは湯浅さんの発案なんですが、最初に聞いたときは「作品としてまとまるのかな?」と思って。でも湯浅さんにはしっかりしたビジョンがあるようだったので。そういうのって思い付きで言ってるわけではないですよね?

湯浅 「あ、見えた!」という感じはあります。音が鳴って画も見えて、これは面白そうだなって。でもそれを人に伝えるのは難しい。時には監督という立場を行使することもありますけど(笑)、今回は仕切っている霜山くんにビジョンを理解してもらわないといけないと思いました。「やれって言われてるからやってるんです」という感じだと、やっぱりいい作品はできないので。

©臼井儀人/SUPER SHIRO製作委員会

©臼井儀人/SUPER SHIRO製作委員会

「四畳半神話大系」のようなテンション高い感じがベース(霜山)

──配信の告知PVを観たとき、絵がよく動いているという印象を持ちました。

湯浅 霜山くんはめちゃめちゃ動かしますから。僕も最初観たときにすごい動いてるなと思いました。ここまで動くのはなかなかないよなって。

霜山 告知映像ではキャッチーな部分を使っているというのはありますけどね(笑)。でも動いてなんぼの作品だと思うので。

湯浅 スラップスティックのアニメはそこが大事ですよね。

──動きで見せていくという意味で、セリフは少なめなんでしょうか?

霜山 そうですね。シロもあまりしゃべらないし、基本ずっとドタバタしてます。

湯浅 1話5分という短い時間で、何が起きているのかをいかにして伝えるかがポイントで。わかりやすいレイアウトになっているので状況が簡単に把握できると思います。

霜山 それは最初のほうから考えていました。ドリフ(ザ・ドリフターズ)のコントみたいに、平面上でもわかる絵作りにしようというスタンスです。動きが速いので、普通のアニメのような絵作りにしてしまうと何が起きてるのかわからなくなっちゃうんですよね。

──湯浅さんは自身の作品について「ドラッギーでハイテンション」と言われることが多いと過去のインタビューでおっしゃっていたのですが、「SUPER SHIRO」はどういう仕上がりになっていますか?

湯浅 基本的には「クレヨンしんちゃん」の新しいシリーズらしいハイテンションものになっていますよ。

霜山 湯浅さんの過去作で言えば「四畳半神話大系」のようなテンションが高い感じをベースに作ってはいます。セリフじゃなくて芝居で見せるという。

©臼井儀人/SUPER SHIRO製作委員会

©臼井儀人/SUPER SHIRO製作委員会

──「クレヨンしんちゃん」が表の世界だとしたら、今作ではシロたちの裏世界が描かれている感じもあります。

湯浅 そうですね。実は犬社会があって、いろいろな生い立ちの犬が人間の知らないところで戦いを繰り広げている。それをすごく派手に見せている感じです。

霜山 本編の「しんちゃん」とは違う色を出したい思いはありましたね。キャラや背景の色だけでなく、カメラの位置を人間目線から犬目線に変えてみたり。そこは「SUPER SHIRO」ならではかもしれないです。

ボボボボボーンのボの数が合わない(霜山)

──今回の作品に野原家は登場するのでしょうか?

湯浅 ちらちらとは出ますよ。でも詳しいところはまだお楽しみなのかな。後半には哲学的なキャラも出てきたりして。

──そういうキャラを登場させた意図は?

湯浅 こういうキャラクターがいたら面白いなというフォーマットの中で制作しているんですけど、それを崩すような、理解不能なキャラが出てきたら面白いなと。間違ったことは言ってないんですけど、日常とはかけ離れたところで正論を言っているというか。そういうキャラが出てくるとシロは理解が追い付かなくて、そこに面白さが生まれると思ったんです。

──どういうキャラクターなんでしょうか。

湯浅 言えないわけじゃないんですけど、映像で観てもらわないとうまく伝わらないかも(笑)。

霜山 うん(笑)。それ以外にもエピソードごとに濃いキャラクターは出てきますよ。

湯浅 ドーベルマンみたいに“マッチョ”な犬とかね。各キャラには実は裏があって、それが明らかになっていくことで世界が広がっていくという楽しみ方もできると思います。「え、こんな過去が!?」っていう意外性があったり。だから、みんな人気出るんじゃないかな。

──ではアフレコについても話を聞かせてください。

霜山 デカプー役の勝杏里さんはアドリブの付け方が上手だなと思いました。アドリブで場を持って行っちゃうのではなくて、場を盛り上げていくタイプ。ドタバタやってるところにうまくアドリブが付くと、それだけで楽しいんです。

湯浅 すごくサクサク進みますよね。「しんちゃん」って音響の方も慣れているから進行が速い。うまくいかなくてもサッと代案が出ますし。

霜山 引っかかったのは最初にセリフが速すぎるってなったところですかね? でもすぐに皆さん調整していて。あとボボボボボーンのボの数が合わないという(笑)。それが一番テイクを録り直しました。

湯浅 面白かったですよね。ボボボボ、ボボ……?みたいな。それで1つ話ができるんじゃないかっていう(笑)。

庶民的なところがクレヨンしんちゃんらしさ(湯浅)

──湯浅さんや霜山さんが考える“クレヨンしんちゃんらしさ”とはなんでしょうか?

湯浅 「しんちゃん」って日常なんですよね。シロは今作でスーパーヒーローなんですけど、実際は等身大の犬で。例えば「ヒーローは絶対こんなもの食べない」と言われたとき、シロは「食べたいんだけどなあ……やめとこうかな」みたいに思う。そういう庶民的なところがしんちゃんらしさかもしれない。大塚明夫さんが担当しているかっこいい心の声に、シロ自体が追いついていないところとかも。

©臼井儀人/SUPER SHIRO製作委員会

©臼井儀人/SUPER SHIRO製作委員会

霜山 僕はギャップにしんちゃんらしさを感じてるかもしれないです。ヒーローだけど気が弱かったり、悪役だけどかわいかったり、よくわからないけどかっこよかったり。それを画面上の動きで見せられるのが楽しい。

──「しんちゃん」に対して大人が楽しめる作品という印象を持っている人は多いと思います。特に劇場版には、人と人のつながりに関するカタルシスがあって。「SUPER SHIRO」にそういう要素はありますか?

湯浅 ありますね。基本的には子供向けのスラップスティックですけど、キャラクターの裏が見える作りにはなっているので。哲学的なキャラクターを入れたのは、コアなファンにも楽しんでほしいという気持ちがあるからです。

霜山 大人が息抜きに観られる作品になってますよね。尺が短いので途中で飽きることもないですし。

湯浅 うん、大人が楽しんで作っているので面白いと思います。シロが健気にがんばっているところを楽しんでほしいですね。

©臼井儀人/SUPER SHIRO製作委員会

©臼井儀人/SUPER SHIRO製作委員会

ビデオパス「SUPER SHIRO」配信 概要

©臼井儀人/SUPER SHIRO製作委員会

©臼井儀人/SUPER SHIRO製作委員会

タイトル
「SUPER SHIRO」
配信日
2019年10月14日(月・祝)より「ビデオパス」にて配信中
スタッフ
  • 原作:臼井儀人(らくだ社)
  • 総監督:湯浅政明
  • チーフディレクター:霜山朋久
  • 脚本:うえのきみこ
  • アニメーション制作:サイエンスSARU
キャスト
  • シロ:真柴摩利
  • ヒーロー語り:大塚明夫
  • ビボー:ゆかな
  • デカプー:勝杏里

詳細はこちら

ビデオパス アプリのダウンロードはこちら

  • Google Playからダウンロード
  • App storeからダウンロード

au以外のユーザーもご利用いただけます。

プロフィール

湯浅政明(ユアサマサアキ)

2004年公開の初監督作品「マインド・ゲーム」を手がけたのち、テレビアニメ「四畳半神話大系」「ピンポン THE ANIMATION」などを監督。2017年には劇場アニメ「夜は短し歩けよ乙女」「夜明け告げるルーのうた」が公開され、2018年にはNetflix配信の「DEVILMAN crybaby」を手がけた。NHK総合で放送されるアニメ「映像研には手を出すな!」、Netflixで配信が発表になった「日本沈没2020」のほか、古川日出男の著書「平家物語 犬王の巻」をもとにした映画「犬王」(2021年公開予定)でも監督を務める。

霜山朋久(シモヤマトモヒサ)

テレビアニメ「ARIA The ANIMATION」「スペース☆ダンディ」や、劇場版「鋼の錬金術師 嘆きの丘(ミロス)の聖なる星」などで作画監督を務める。「夜は短し歩けよ乙女」「DEVILMAN crybaby」といった湯浅政明の監督作にも参加。2019年には原恵一の「バースデー・ワンダーランド」でも作画監督を担当した。